大阪公立大学のキム スー ウン助教たちのグループは、「AI」と「赤外線サーモグラフィー」を使って優しく牛の体温を測る方法を発見しました。
これまでの体温測定の課題

牛の健康をチェックする上で、体温測定はとても大切です。
今までは、体温計を牛のお尻(直腸)に入れて測るのが一般的でしたが、この方法は牛にとってストレスになってしまいます。また、一時的にしか測れないため、時間が経つにつれて体温がどう変化していくかをずっと見続けることが難しいという問題がありました。
AIが「一番大事な場所」を自動で見つける!

最近では、牛に触れずに体温を測れる赤外線サーモグラフィーという技術が注目されています。これは、熱を測る特別なカメラで、牛の目や鼻の周りの温度を測る方法です。動物に負担が少ない、優しい方法です。
しかし、この赤外線測定も、連続的に体温の変化を測り続けることが難しく、また、どこを測るか(関心領域:画像データの中で特に調べたい部分のこと)を人が手作業で決めていたため、測るたびに結果にばらつきが出ていました。
キム助教たちは、この課題を解決するために、赤外線サーモグラフィーと人工知能(AI)を組み合わせました。
AIは画像の中から、牛の目や鼻のうち、特に温度の変化に敏感に反応する「高温になっている場所」を自動で探し出すことができます。
研究では11頭の子牛のデータから、AIが自動で探し出した目と鼻の温度変化を調べました。特に、その領域の中で「温度が特に高い部分(上位10%や30%)」に注目して分析しました。
すると、温度が特に高い部分(上位10%と30%)に注目して分析した結果、体温の変化のパターンがとてもよく似ていて、信頼できることが分かりました。
つまり、AIが自動で「測るのに一番いい場所」を見つけ、その場所の温度を測り続けることで、牛に触れなくても、正確で一貫した体温変化のパターン(体温の変化の仕方)をずっと取得できるようになったのです。
これからの期待
この新しい技術によって、次のようなことが期待されています。
- 正確な健康管理: 牛の体温変化のパターンがわかれば、統計を使って牛の健康状態やストレスを、これまでよりずっと正確に知ることができるようになります。
- 動物福祉の向上: AIが自動で牛の体調をチェックしてくれるシステム(自動モニタリングシステム)が牧場などに導入されれば、牛の病気や体調不良を早く見つけることができ、牛たちがより快適に過ごせるように(動物福祉の向上)貢献します。
☑️赤外線サーモグラフィー
「赤外線サーモグラフィ」は、「特別なカメラを使って、私たちには見えない物の温度を、色がついた画像にして写し出す技術」のことです。
この世界にあるすべての物(生き物や機械など)は、常に「赤外線放射エネルギー」という熱のエネルギーを出しています。サーモグラフィは、この熱のエネルギーをキャッチし、それを計算して「見かけの温度」に変換します。そして、温度が高いところは暖色(赤や黄)、低いところは寒色(青など)のように、色で分けて画面に表示し、温度分布を見せてくれます。
この技術の大きな特徴は、触らなくても(非接触で)離れたところから温度を測れることです。動いている物や、熱くて危険な物でも、安全に、しかもその場で(リアルタイムで)広い範囲の温度の広がりを一度に確認できます。食品などを衛生的に測ることも可能です。
この便利な技術は、牛の健康管理にも活用されています。従来の体温測定方法が牛にとってストレスだったのに対し、サーモグラフィを使えば目や鼻の周辺の温度を非接触で測れるため、動物に負担をかけません。これにより、牛の体温が時間の経過でどう変化するか(体温変化パターン)を一貫性をもって把握できるようになり、動物福祉の向上にも貢献すると期待されています。
●参照元:
AI×赤外線技術で牛の体温を測定目と鼻の温度分布を高精度に検出・解析 大阪公立大学大学院獣医学研究科
