
ウナギは、体が細長い魚ですが、とても高い運動能力を持っています。
たとえば、背骨の一部が傷ついても水中を泳ぐことができたり、でこぼこした陸の上でも上手に移動できたりするのです。
東北大学などの研究チームは、この驚くべきウナギの動きの秘密(神経回路メカニズム)を調べました。
その秘密は、ウナギの体に備わっている二つの感覚を活用した動きの調整の仕組み(感覚フィードバック)にありました。
一つは、筋肉などが伸びる感覚(伸展感覚)。
もう一つは、体に物が触れたり押される感覚(圧力感覚)です。
研究者たちは、この二つの感覚を使いこなすウナギの神経の仕組みを数式にしてモデルを作り、コンピュータのシミュレーションと、ウナギそっくりのロボットを使って実験しました。
その結果、水中を泳ぐための神経の仕組みが、水中で安定した動きを生み出すだけでなく、障害物がたくさんある陸上でも、しっかり移動できることが世界で初めてわかりました。
特に、「伸びる感覚」が、陸上で障害物を足場にして前に進む力(推進力)を生み出すのに重要だと明らかになりました。
また、背骨が切れてしまった状態でも、この感覚フィードバックの仕組みが機能することで、体が壊れても動き続けられることもわかりました。
この発見は、動物が環境の変化に対応して動く仕組みを解明するだけでなく、水の中や、でこぼこ道など、どんな場所でもタフに動き続けられる高性能なロボットの開発に役立つと期待されています。
また、魚が昔、水から陸へ進出した進化の謎を解くヒントにもなるかもしれません。
●参照元:
ウナギが水中も陸上も泳げる仕組みを 数式とロボットを用いて解明 ~「伸び」と「圧」の感覚を活用した運動制御が鍵~ 東北大学学際科学フロンティア研究所
